コラム
歯医者が教える、重度歯周病歯の正しいお手入れ方法
歯周病の正しいお手入れの方法をご存知でしょうか?毎日歯を磨くこと、定期的に歯科医院に通うことはもちろんですが、歯周病歯の正しいお手入れにはコツがあります。
当院で歯周病治療を手がけている青木副院長の研究を元に「お手入れのコツ」をまとめてみました。
まず、適切なお手入れの前に、ご自分の歯周病タイプを知ることから始めましょう。この歯周病タイプを判別する方法として、当院で行っている歯周病診断の一つである「PRC(歯周病レーダーチャート)」というものがあります。
PRC(歯周病レーダーチャート)
歯周病は、歯周病の原因(本体)である病原菌が歯の周囲に付着し、相当量定着することで罹患します。さらに、その歯に負荷がかかればかかるほど進行し、個々人の抵抗力が高いほど進行が抑制されます。そのため、歯周病の進行は、【病原菌】、【負荷】(歯にかかる負担・力)、【免疫力】という3つの観点からそれぞれ対処を検討していく必要があります。
当院では、この3つの要素をさらに細かく分けて、原因となりうる要素を明確に診断します。それを可視化した歯周病レーダーチャート(PRC)では、以下の項目で評点をつけ、タイプ別の治療方法や適切なケアを検討しています。
①口腔衛生に関する行動 | 病原菌のコントロールをする上で最も重要かつ計画の根幹 |
②歯周病に対する正しい知識 | 3要因に関与します。生活習慣病たる所以 |
③出血、深部ポケットの有無 | 病原菌の繁殖度を示します。 |
④唾液 | 病原菌、抵抗力に影響します。 |
⑤家族歴 | 抵抗力の評価に用います。 |
⑥歯周病関連の全身疾患 | 抵抗力の根幹、予後にも影響し長期計画にも影響します。 |
⑦義歯等の使用とその適合 | 負荷、抵抗力、本来義歯は歯を守ります。使用と適合は予後に影響します。 |
⑧臼歯部の対向の有無 | 負荷、抵抗力、他の歯の予後に影響、咀嚼、栄養、体力に影響します。 |
⑨食物形態 | 抵抗力、病原菌、不適切な食事は抵抗力を下げ、歯周病の治癒に影響します。 |
⑩前歯部の適切な咬合 | 負荷、抵抗力 、他の歯、顎関節の予後に影響します。 |
⑪外傷性咬合の有無 | 負荷に影響します。 |
⑫歯牙の動揺度 | 負荷に影響します。 |
【病原菌】優位型重度歯周病(PRCの①②③項目の点数が悪い方など)
歯周病の進行の原因となっている【病原菌】の悪性度(量と質)をコントロールするお手入れが有効になります。病原菌の中でも悪性度の高い嫌気性菌を中心としたセルフケアが推奨されます。嫌気性菌は、歯根分岐部、歯周ポケット内に多く住み着いています。したがって、これらの部位に薬効のある歯周病用の歯磨剤、含漱剤をより多く届けることが最も効果的なセルフケアになります。
具体的には、
分岐部病変タイプの方
歯間ブラシに専用の薬剤を使用して清掃をする。
歯周ポケットタイプの方
ワンタフトブラシ、より細い毛の歯ブラシを用いて、バス法による歯ブラシをする
【負荷】優位型重度歯周病(PRCの⑦⑨⑩⑪⑫項目の点数が悪い方など)
このタイプの方は、前提として為害性のある【負荷】が歯周病歯にかかっているため、歯科医師に定期的に削合、固定によるコントロールしてもらうこと必要があります。セルフケアの中では余計な負荷を与えない為に、清掃時に生じる負荷についても考慮する必要があります。負荷型の方は、入れ歯のバネがかかっている歯、インプラントの相手方の歯、かみ合わせ上、歯ぎしりなどでよく当たっている歯が悪化していく傾向が強く、ここをケアすることが効果的なセルフケアになります。
具体的には
入れ歯をご使用の方
入れ歯のバネの内側を義歯ブラシでこする。歯周病の薬を入れ歯につける。場合によっては、入れ歯を入れたまま、歯磨き粉を使用しないで歯ブラシも推奨されます。
インプラントがある方
インプラントを含めて、フッ素入りで無い歯磨き粉、研磨剤の入っていない歯磨き粉を使用する。
歯ぎしりがある方
酸性度の低い飲料水を飲んで、アルカリ性に傾けてから柔らかめの歯ブラシで歯磨きをする。
【抵抗力】優位型重度歯周病(PRCの④⑤⑥⑦⑧⑨⑩項目の点数が悪い方など)
このタイプの方はお身体の病気、遺伝などの要素が強く、悪化していることが原因と言えます。前提として、細菌検査、3DSなどの治療を積極的に受けていただくことを推奨します。局所因子として、「たばこ」が、お身体の病気とは別に、悪化させている傾向が強い印象があります。また、免疫力を高めることとは別に、セルフケアでも抵抗力が低いことを理解して行うことが効果的になります。
タバコを吸われる方
禁煙を心がけるのはもちろん、スティルマン改良法、ローリング法にて歯ブラシをする。継続的に研磨剤の歯磨き粉を使用するのは推奨されません。
お病気のある方
一日3回ではなく、5回以上歯磨きをする。22時~2時の時間帯は積極的に睡眠をとり、ベロを磨く、寝る前には必ず歯磨きをする。
いかがでしょうか?
同じ重度歯周病歯であっても、タイプによって使うべき歯ブラシ、歯磨き粉、タイミングなどは全く違います。ご自身のセルフケアが病態として合っているかということを、主治医の先生にご相談されるのも良いかと思います。
今回ご紹介したPRC(歯周病レーダーチャート)診断を受けたい方、歯周病予防をされたい方は以下から診療をご予約下さい。治療をご検討中の方には、歯周病の無料お悩み相談も行っておりますので、詳しくはお問い合わせ下さい。また、他院にて歯周病治療を実施中の方は、当院の「セカンドオピニオン外来」をご利用ください。
当院の重度歯周病治療の詳細や、治療後に実施している口腔環境維持プログラムについては、「重度歯周病でお悩みの方へ」をご覧いただければと思います。